2022年に話題になっていたドラマのひとつ「silent」
TVerで観ようと思ったらCMがあまりにも多くて断念していました。
2022年の年末に一挙放送がされていたので録画して、昨日ようやく全話観ることができました。
心に染みる素晴らしいドラマでした。
あらすじ
(ネタバレあり)
高校時代の同級生だった紬と想はお付き合いをしていたのですが、大学進学後のある日、想から突然別れを告げられます。
高校卒業から8年、想の友人でもある湊斗と付き合い同棲を考えるタイミングで、紬は街で想を見かけます。
そして彼が病気で聴力を失っていたことを知ります。
彼が自分の病気を隠して昔の友達との連絡を絶っていた思い、手話を学び始める紬、手話の先生と彼の過去、家族の思い、それぞれの思いが丁寧に描かれたドラマです。
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人と違ってしまった自分への引け目
聴力を失ってしまった想が昔の友人との連絡を絶つ描写があるのですが、私自身、夫を亡くした頃に人との関係を絶ちたくなったことがあります。現実には「しなければいけないこと」や「行かなくてはならない場所」があったので関係を絶つことはありませんでしたが。
会う人に気を遣わせて『元気出してね』とか言わせてしまうのが辛かったのです。
あと、ほとんどの同世代の既婚者は旦那様が健康に生きているのが羨ましくて、人を羨む自分の小ささが辛かったのです。
先日読んだ山本文緒さんの日記『無人島のふたり』では癌で余命宣告された自分と旦那様のことを「無人島にいる」状態になぞらえていましたが、そんな気持ちを味わうことが人生には時にあります。
心配したい方の気持ち
とても印象的だったのは8話の後半で登場する紬の母の言葉です。
紬の父は紬がまだ小さい頃、母が弟を妊娠中に病気で亡くなっていたということがわかる回です。
毎日のお見舞いは大変だから来なくていいと夫に言われたと「紬母」が当時を振り返って言うセリフです。
「ぶっちゃけ、お父さんのために行ってたんじゃないわけよ」
何かあってもボタンを押せば看護師さんが来てくれるし、自分がいて何かできるわけでもないし。
「いたくているだけなのにね」
「伝わんないよね、そういうの」
「ただ横にいたいってだけの自己満足なわけよ」
「大変だからって迷惑かけるからって、それじゃ納得できないよね」
とてもとてもわかります。共感します。
何もできないのはわかっている。自分がそばにいたいから行くだけなんです、面会って。
それを申し訳なく思う気持ちもわかるけど、でもそばにいたい気持ちなんです。
ドラマでは、子供たちの年齢から推測して「紬父」が旅立って20年以上たっていると思われます。
ドラマでは笑って話している「紬母」ですが、ここまでくるには何年の歳月が必要だったかと思いを馳せます。
私が夫を亡くした時は末っ子が高校生になっていました。それでも周囲の両親揃っている家族を羨んだり妬んだりして辛くなったことがあります。そこから気持ちを立て直していくには膨大なエネルギーが必要でした。
時間が必要
物語では紬と想を軸に、友人たちや家族の気持ちが柔らかくなっていく様子が丁寧に描かれています。
時間と、思いやりと、そして「言葉」
(ヒゲダンの主題歌は物語そのもののような素晴らしい歌で、やっぱりヒゲダンって天才!と思います。)
(劇中に何曲も登場するスピッツの歌もとても素敵!)
ドラマの冒頭の想の作文でも出てくるけれど、「言葉」がこのドラマの大きなテーマのひとつのようでした。
どんなに事情が変わってもわかりあえる、そんな優しいエンディングで、幸せな気持ちで全11話を観終えることができました。
素晴らしいドラマをありがとうございました!
脚本を書いたのは私の娘たちとそれほど年齢が変わらない方で、過去には看護師をされていたそうです。
仕事で、病気やハンディキャップを抱えた人やその家族をみつめてきたのかもしれません。